1円玉がつないだ、岐阜のやさしさ。—「岐阜っ子ピヨちゃん」が届けたい“ふわしゅわ”の時間

「レジのところに“1円玉が足りません”って書いただけなんです。そしたら…家にある1円玉を集めて、わざわざ持ってきてくださる方がいて」

そう話すのは、チーズスフレ専門店「岐阜っ子ピヨちゃん」の店主 若曽根 絢さん。

商売の話というより、まるで“近所の助け合い”のような出来事だ。

「岐阜の人って、本当にあったかい。だから私も、岐阜に恩返しがしたいんです」

このお店の魅力は、スイーツの美味しさだけではない。

子どもが目を輝かせる店内の仕掛け、岐阜の景色を再現したジオラマ、そして“誰もが手に取りやすい価格”に込めた想い。

岐阜のやさしさが、まるごと形になったようなお店だった。

そこで今回は、チーズスフレのこだわりだけでなく、「岐阜っ子ピヨちゃん」というお店が生まれた背景や、岐阜への想いについて伺った。

基本情報はクリック!

お問い合わせの際は「つたギフ見ました」と言っていただけるとスムーズです。

名称岐阜っ子ピヨちゃん
所在地岐阜市萱場南2丁目7-1 ビューティハイツ
連絡先TEL058-216-4540
営業時間11:00〜18:30(商品がなくなり次第終了)
定休日水曜日
公式サイトhttps://www.instagram.com/gifu.piyo/

ホール18cmが、1,296円。みんなで囲む“普段使いのケーキ”

「岐阜っ子ピヨちゃん」の看板は、チーズスフレのホールケーキ。サイズは18cm(6号)で、価格は1,296円。味は、プレーン・抹茶・チョコレートの3種類が並ぶ。

「この地域柄というか、小さいお子さんからご年配の方まで、みんなで楽しめるスイーツを出したいと思って。特別な日だけじゃなくて、日常に寄り添えるケーキにしたかったんです」

“ホール売り”にこだわる理由も、そこにある。

切り分けて、会話が弾んで、「おいしいね」を共有する。そんな時間まで含めて届けたい。

ホールケーキを囲むだけで、いつもの日が少しだけ華やぐ。絢さんは、その瞬間を大切にしている。

もちろん「食べきれない」という声もある。一人暮らしの方や、少人数の家庭から「小さいサイズが欲しい」と言われることもあるそうだ。

「今のところは、カットして冷凍してもらって、好きなときに食べていただく形で案内しています。夏は“アイスみたいで美味しい”って、お客さんに教えてもらったんです」

お客さんの声から、楽しみ方が増えていく。

この店の“成長の仕方”も、どこか岐阜らしく、あたたかい。

ふわふわ、割るとシュワッ。軽いのに、また食べたくなる

このチーズスフレをひと言で表すなら「ふわしゅわ食感」だ。

甘さは控えめなのに、最後まで美味しく食べられる。

割ったときに“しゅわっ”と音がする、泡のようなふわふわ食感がたまらない。

「18cmって大きいねって、皆さん言うんですけど…実際食べた方が“半ホール食べちゃった”って。軽くてペロッといけちゃうみたいで、次は2ホール買っていく方もいます」

そんな言葉のとおり、取材で購入したプレーン味のチーズスフレは、翌日の昼にはすべてお腹の中だった。

“軽さ”の秘密は、焼き方にある。

温度を5段階で変える、繊細すぎる焼成。9割が失敗の“割れた日”も

“ふわしゅわ”の秘密は焼成方法にあるという。

低温・高温を組み合わせ、温度を5段階で調整しながら、約1時間かけてじっくり焼き上げる。上火・下火も細かく設定される。

「こんなに温度調整しているお店は他にはないです」

ただ、その道のりは簡単ではなかった。

「軽いケーキって、膨らむぶん割れやすいんです。最初は、焼いたうちの9割くらい割れちゃったこともありました」

割れるのが怖くて温度を下げると、今度は中が生焼けになる。

“ちょうどいい”を探す微調整の連続で、半年ほどかけて今の焼き方にたどり着いた。

さらに、スフレは天候にも左右される。湿度や気温で焼き上がりが変わるため、日々の状態を見ながら調整を重ねるという。

「毎日ちょっとずつ変えながら、同じクオリティで出すのが本当に大変です」

手間はかかる。でも、その繊細さが“ふわしゅわ”を生む。食べた瞬間の軽さと、また食べたくなる余韻は、数え切れない試行錯誤の積み重ねの上にある。

冷やしてもしっとり、温めればぷるぷる。「岐阜っ子ピヨちゃん」の2つの“美味しい”

おすすめの食べ方は2つ。

ひとつは、冷蔵でしっとりとチーズの風味を楽しむ食べ方。もうひとつは、カットして電子レンジで20〜30秒ほど温める食べ方だ。

「温めると、ふわーって上がってくるんです。そのタイミングが一番おすすめ。それ以上やるとしぼんで硬くなっちゃうので、短時間がコツです」

温めたスフレは、ぷるぷると揺れる。卵の風味も増し、印象が変わるという。SNSで“ぷるぷる動画”が投稿されるのも、この店ならではの風景だ。

ケーキ屋なのに、岐阜のジオラマがある理由

子どもの興味が止まらないジオラマ

「岐阜っ子ピヨちゃん」を訪れると、ケーキだけでは終わらない。

店内には、岐阜の景色を再現したジオラマが少しずつ増えている。岐阜駅、街の建物、川、季節の演出…。完成すれば、春夏秋冬の岐阜を“見て楽しめる”空間になる予定だ。

「岐阜をもっと魅力的に発信したくて。県外の方がSNSを見て来てくださることもあるので、岐阜を知るきっかけになったら嬉しいんです」

ジオラマ制作は“ジオラマ部”のメンバーが中心になって進めている。

3Dプリンターでパーツを作り、CADで設計し、レジンで川を表現するなど、こだわりは本格的。電車が走る仕掛けまであり、子どもが夢中になるのも納得だった。

岐阜の温かさに救われたから、岐阜へ恩返しをしたい

絢さんが「岐阜に恩返ししたい」と話す背景には、日常の中で感じた温かさがある。

「この前、家からスーパーまで歩いたら、知らないおばあちゃんが“送っていくか?”って声をかけてくれたんです。岐阜ってそういうことが、普通にある」

開業準備でも、同じだった。

人脈も資金も十分ではない中、DIYで店を作り、友人や交流会で出会った人が無償で手伝ってくれた。「頑張ってるなら応援するよ」と背中を押された。

そして、あの“1円玉”の出来事。

それは、岐阜の温かさが凝縮されたようなエピソードだった。

「だからこそ、お店がちゃんと繁盛していくことが、支えてくれた人たちへの恩返しになると思うんです」

“岐阜の銘菓”へ。目標は岐阜に3店舗、そして岐阜駅へ

将来的には岐阜に3店舗を出し、岐阜駅周辺の販売導線(委託販売など)にも挑戦したいという。

まずは企業や団体の予約(引き出物、子ども会など)も増やしていきたいと考えている。

ただ、課題は日持ちだ。現状は冷蔵で3日。そこで今、食品開発の専門家とも協力し、常温で1週間持たせる試験を進めている。

成功すれば、届けられる範囲は一気に広がる。

“岐阜の手土産”として、より多くの人の記憶に残る存在になっていくはずだ。

ふわしゅわの先にあるのは、岐阜の笑顔が増える未来

「味だけで勝負しても、価格で勝負しても、勝てないところがある。だからうちは、うちにしかできないことをやりたいんです」

チーズスフレに、岐阜の景色と、子どもの笑顔と、来店体験を重ねる。

それは“スイーツ店”という枠を少しはみ出しながら、岐阜の良さを手渡していく試みでもある。

ふわふわで、割るとシュワッ。

その軽さの中に、岐阜の温かさが確かに息づいていた。