岐阜市西鶉に拠点を置く和模型工房は、産業機械やプラント設備、展示会用の可動模型など、幅広い分野の模型製作を行う専門工房だ。
代表の小山周一さんは、全国から寄せられるメーカーや官公庁の依頼に対応。設計図や資料をもとに、製品の構造や仕組みを「わかりやすく伝える」模型づくりを続けている。
県内では、北方町役場の1階に展示されている模型をはじめ、昭和コンクリート株式会社、岐阜工業株式会社、イビデン株式会社、株式会社 東洋スタビなどの企業とも取引がある。
また、若い世代にものづくりの魅力を伝える活動にも力を入れており、地域の学校や工業高校と連携し、積極的に見学やインターンシップを行っている。
そんな小山さんに、模型づくりに込めた想いと、これからの展望についてうかがった。
基本情報はクリック!
お問い合わせの際は「つたギフ見ました」と言っていただけるとスムーズです。
| 名称 | 株式会社 和模型工房 |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県岐阜市西鶉3-65-1 |
| TEL / FAX | 058-213-4111 / 058-213-4112 |
| メール | info@wamokei.com |
| 営業時間 | 9:00~18:00 |
| 休業日 | 土・日・祝日 |
| 公式サイト | https://www.wamokei.com |
事業内容について教えてください

わが社では、医療や半導体関連、仕分け装置、クレーン模型など、業種を問わずさまざまな分野の「模型」を作っています。依頼元の企業さんから設計図や資料をいただいて、立体化していく流れです。
たとえば、おにぎりを作る機械模型を作ったことがあります。ご飯をほぐして、具を入れてにぎって、包装して、異物が入っていないかチェックして、出てくるまでの工程をすべて小さな模型で再現したんです。
ボタンを押すと動くようになっていて、実機を見なくても、見た人が「こうやってできるんだ」と分かるように作りました。
東京ビッグサイトや幕張メッセ、大阪のインテックスなど、展示会に出展されるメーカーさんからの依頼が多いです。
実物を持っていくとコストがかかり過ぎたり、危険だったりしますから、来場者に製品を説明するツールとして活用されています。
事業を始めたきっかけは何ですか?

ものづくりが好きだったことと、父の影響——これが原点です。
父は店舗設計の仕事をしていて、小さい頃から職人さんたちと現場を回る姿を見ていました。自分で決めて、自分の責任で動く。働く背中がいつも楽しそうで、父の働き方にあこがれていたんでしょうね。
大学は文系でしたが、就職活動をしてもピンとくる仕事が見つからず、親に頼んで夜間のデザイン系専門学校に通いました。その頃アルバイトをしていた設計事務所で、設計よりも模型を作る仕事がとても楽しいって気付いたんです。 それが「模型屋」という仕事を知ったきっかけでした。
卒業後は模型会社に入り、セントレア空港や愛知万博などの案件に、リーダーとして関わりました。やりがいはありましたが、次第に「父親のような働き方がしたい」と思うようになり、独立を決めました。
最初はひとりで始めた仕事でしたが、依頼が増えて人を雇うようになり、気づけば法人化していたんです。 今は営業や見積もりが中心ですが、手を動かしながら考える——その姿勢は、今も変わりません。
他の模型屋さんとは、どこが違いますか?

リアルに再現するよりも、「伝わる模型」にするところが、他の模型屋さんとは違います。
図面に沿って外観を詳細にきれいに作る模型と違って、 機械模型は「どう動くか」「どういう仕組みになっているか」を伝える必要があります。
ご依頼いただくメーカーさんは、ご自分が設計したモノなので、熱意をもって説明してくださる。そこで「御社の強みはここだろうから、ここを詳細につくりましょう」と、ご提案させていただくんです。
予算や時間が決まっていますから、一部分は省略したり、設計図通りではなく「中でどう動いているのか」「どういう構造になっているのか」を見せたりするために、透明なパーツを使ったり、ボタンで動かしたり、光らせたりといった仕掛けを入れるんです。
図面を読み取って立体化するだけでなく、お客様が“どこを見せたいのか”を理解して、「仕組みや機能が伝わる模型」を作っています。
機械模型を作る人は少ないと聞きましたが?

機械は部品や構造が複雑で、なおかつ、動きを想像する必要がある。だから、建築出身の模型屋さんには、苦手意識のある方が多くて、なかなか手を出しにくい分野なんだと思います。
僕は、もともと車やバイク、ラジコンが好きで、仕組みを考えたり分解したりするのが大好きだったから、図面を見てどう動くか考えるのが、とにかく楽しかったんです。
創業からずっと機械模型の分野で仕事を続けてきたので、「こう繋がっているんだろうな」とか「このモーターでここを動かしてるんだな」っていうのが分かるようになりました。どう見せればわかりやすいか、といったノウハウも次第に蓄積されています。
どの案件にも新しい発見があり、分からないことに向き合いながら試行錯誤して、形にしていく繰り返しがあるからこそ、誰にでもできる仕事ではないのかもしれません。
一般社団法人 日本建築模型協会とは?

僕が会長として運営しているコミュニティです。設立のきっかけは、独立して間もない頃に「一人でやるには限界がある」と感じたことでした。
模型屋というのは個人でやっている人が多くて、当時、横のつながりがほとんどなかったんです。そこで、SNSを通じて声をかけながら、全国の同業者と少しずつつながっていきました。
全国で約70社の模型屋さんとつながり、有志の間で自然と出来上がったのが日本建築模型協会です。
今では、東京と大阪で年に一度ずつ集まりを開いていて、得意分野の違う仲間どうしで協力しながら仕事を進めることが増えてきました。
特に機械模型を扱う会社は全国でも数が少ないので、「機械の仕事はお願いしたい」と相談を受けたり、信頼できる協力会社さんにお願いすることもあります。
こういった同業の繋がり、協会の仲間がいたからこそ、うちはここまで続けてこられたと思っています。
嬉しかったことや大変だっとことを教えてください
特定の1件を挙げるのが難しいくらい、どの仕事にも思い入れがあって、地味に見える仕事かもしれませんけど、人の役に立てる実感があるんです。
お客様は、自分たちが開発したものをどう見せたら良いかを真剣に悩んでいらっしゃいます。悩みを模型で解決し、形にしてお見せした瞬間。お客様が納得された表情をされると「やっていてよかったな」と思います。
ただ、僕らは職人ですから、どんなにお客様が喜んでくださっても、自分の中では「100点満点」がないんです。納品のたびに「あそこはもう少しこうすればよかった」「次はもっとこうできるな」と毎回思います。
社員も同じだと思います。自分の中で納得できるものは、一生追い続けていく感じがしますね。
今後の事業の展望をお聞かせください

「本物よりも良く見せたいな」って思っています。
昔と違って、3Dプリンタや機械、道具を使って作りますから、精度よく細かいところまで表現できるようになりました。時間とコストさえかければ、いくらでも細かいことができる。
だからこそ、僕らはリアリティではなく、お客様が説明したい部分について、本物に近い動きや仕組みが分かる模型。分かりやすさでいえば「本物より良く見える模型」を作っていきたいです。
読者へのメッセージをお願いします

うちの仕事は模型作りですけど、本質的には“伝わらないを解決する”仕事だと思っています。
製品や仕組みを説明したいけど、図や写真では伝わりきらない。そんなとき、模型にすると一目で分かるようになります。 「見て、触れて、理解できる」形を作るのが、僕らの役割です。
「こういうものを見せたいけど、どうしたらいいかな」と思ったら、まず一度相談してもらえたらと思います。
また、若い世代に「何か作ってみようよ」と伝えたいです。
今の子どもたちは、ゲームやスマホで過ごす時間が多くなりました。もちろんそれが悪いわけではありません。でも、自分の手を動かして何かを作る楽しさを、もっと知ってほしいんです。
うちでは学校の見学やインターンの受け入れも行っていますが、実際に作業した子たちは、みんな「楽しかった!」と帰っていきます。
失敗も成功も含めて、自分の手で形をつくることには特別な面白さがある。プラモデルでも、木工でも、なんでもいい。「これ、どうなっているんだろう?」と興味を持って手を動かしてみる――手で考える体験をして欲しいです。
