「本当に美味しいジビエに出会ってほしいんです。」
そう明るく語るのは、飛騨で家族とともにジビエ居酒屋「山の幸うり坊屋」を営む田中まさあきさん。
田中さんが提供しているジビエ料理は、いわゆる「既存の料理の肉だけをジビエに置き換える」ものではない。
猟師の父が山で獲った野生動物を自分たちの手で解体し、肉の状態や個体差を見極めながら、その肉に最も合った調理法で一皿に仕上げる──そんなスタイルを続けている。
独特な風味で嫌煙されがちなジビエだが、肉の個性に合わせて手を加えると、肉が持つ本来の味わいが際立ちながらも、おいしく食べられるという。
家族での店づくりの傍ら、農家の友人とポッドキャストでも「ジビエは本当に美味しい」を配信している。
今回は、そんな田中さんに、ジビエへの想いと料理に込めたこだわりを聞いた。
基本情報はクリック!
お問い合わせの際は「つたギフ見ました」と言っていただけるとスムーズです。
| 名称 | 山の幸 うり坊屋 |
|---|---|
| 事業内容 | ジビエ居酒屋 |
| 所在地 | 岐阜県高山市本町3丁目58 |
| 連絡先 | 090-8261-8702 |
| 営業時間 | 18:00~24:00(ラストオーダー23:00) |
| 休業日 | 水曜日 |
| 予約 | 18:00~19:00の間のみ受付(電話にて申し込み) |
| 公式サイト | https://www.instagram.com/yamanosati_uribouya |
「山の幸うり坊屋」の紹介をお願いします

山の幸うり坊屋は、ジビエをメインに、飛騨の山や川で獲れた自然の恵みを使った居酒屋を家族でやっています。
ジビエって言うのはフランス語で、狩猟でとってくる野生動物の肉という意味です。
イノシシ・シカ・クマを中心に、キノコや山菜、川魚といった季節ごとの山と川の恵みが食べられます。
父がもう50年ほど猟師をしていて、そのつながりから、山の動物が集まってきます。
「ジビエ=高い」というイメージがありますが、山の幸うり坊屋ではリーズナブルに、いろいろなジビエを気軽に楽しめるんです。
季節によってメニューが変わるので、「前に来たときと違うものがある」と楽しんでもらえるのもポイントですね。
山の幸うり坊屋では、どんな料理が食べられますか?
串焼きや鍋、煮込み、低温調理、燻製、蒸し焼きなど、バリエーションはかなり豊富です。
めずらしい料理だと「鹿のたたき」がありますね。
猟師はシカ肉をルイベのように刺身で食べるんですが、食品衛生法の観点から生では出せないんです。
そこで、低温調理で加熱し、刺身のような雰囲気を残した肉を「鹿のたたき」という名前で、提供しています。

初めての方は、イノシシ・シカ・クマの串焼き3本セットで食べ比べするのが楽しいと思います。「ジビエ」をシンプルに感じられますよ。

鍋料理だと、イノシシのぼたん鍋やクマ鍋、スープに入れると美味しいアナグマ鍋、クマのモツをきれいに下処理したモツ鍋があります。
看板料理のイノシシのスジ煮、シカのワイン煮、クマのクリーム煮という3種類の煮込み料理も、ぜひ味わって欲しいですね。

洋風の味付けとマッチして食べやすく、ここまで来ると、肉ごとの味や香りの違い、余韻の残り方など、それぞれの動物の個性をかなり感じてもらえるはずです。
ジビエを美味しく食べるための、山の幸うり坊屋の工夫を教えてください

血抜きなどの下処理ですね。ここが悪いと、どんなに手を加えて料理しても美味しくなりません。
実際、クマやタヌキは、個体によってはかなり強烈な匂いがします。
タヌキなんて「天敵から身を守るために臭く進化したんじゃないか」と思うくらい、強い匂いがするんです。
山の幸うり坊屋では、自前の解体場で、自分たちで選んだ肉の状態を見て、「どれくらい匂いが強いか」「脂の具合はどうか」などを把握しながら、部位ごと・個体ごとに調理法を変えています。
「これは鍋向き」「これは燻製に」「これは臭みが強いからメンチカツに」など、状態や個体差を見極めながら使い分けています。
他所から仕入れた肉を提供しているお店だと、この「肉に合わせた調理」ができないんですよね。
失敗したものは自分たちで食べて反省するので(笑)、試行錯誤を重ねてお客さんにはベストな形で出しています。
山の幸うり坊屋にはマニアックなお料理もあるとか?

最近はお客さんのニーズも少し変わってきて
- 臭くないジビエだと物足りない
- ジビエ感がない
と言われることが増えてきました。
そこで、あえてクセの強いメニューを用意して、メニュー名の横に「ジビエ感が強い料理です」と注意書きを入れています。
たとえば、クマのレバーは本当に匂いが強烈で使ってなかったんですが、「食べてみたい」とおっしゃる方がいて…。
試しに丸ごと燻製にしたスライスは、私たちでもクセが強いと思う一品なんですが、常連さんは「たまらない」と、来るたびに注文してくれます。
ジビエ感が強い料理の注文は多くて、クマレバーの燻製に関しては残されたことが無いですね。
最初は食べやすいメニューから入って、興味がある方には、「マニア向け」の一皿も楽しめるようにご用意しています。
山の幸うり坊屋には、どんなお客さんが来ますか?

ジビエに興味のある方が多いですね。クマの話題が取り上げられると、「クマってどんな味なんだろう?」という好奇心から来店される方が増えました。
地元の方よりも、観光で飛騨に来られた20〜30代くらいの若い方が多い印象です。
一方で、常連さんはかなりのジビエ好きで、週1〜2回のペースで来てくださいます。
東京や愛知から、定期的に通ってくださるお客様もいて、「次はどんな肉があるかな?」と楽しみにしてくださっているのを感じますね。
ジビエというとワイルドなイメージが強いですが、お店のコンセプトとしては「女性が一人でも気軽に来られるジビエ居酒屋」を目指しています。
実際には女性のお客さんにもたくさん来ていただいていて、「一人でふらっとジビエを食べて帰る」という楽しみ方もしてもらいたいなと思っています。
山の幸うり坊屋で扱う動物はどこで、どのように獲っていますか?

扱っているのは「駆除で獲られた動物」と「狩猟期間中に山で獲った動物」です。
畑を荒らしたり、農家に被害が出たりすると、高山市から地元の猟友会に「駆除してほしい」という依頼が来ます。
その許可を受けて、決められた地域内で罠を仕掛けて捕獲しています。
駆除の場合は安全面もあって、鉄砲ではなく、檻やワイヤーの足罠などが中心ですね。
11月15日から3月15日までの狩猟期間になると、猟として山に入って鉄砲で獲ります。カモなどの鳥類やキツネはほぼ冬限定です。
読者へのメッセージをお願いします

ジビエを初めて食べる方も、「ちょっと苦手かも」と感じた経験がある方も、もう一度、ジビエの本当のおいしさに出会ってほしいです。
ジビエは個体差が大きい食材で、クマは研究者によれば「遺伝によって臭味がまったく違う」と言われています。
だからこそ、肉の状態に合わせて調理を変えないと、「ジビエ=まずい」「臭い」というイメージが広がってしまうんです。
さらに、命の扱われ方についても、誤解が生まれやすい食材だと感じています。
牛や豚、ニワトリといった経済動物は、食べるために育てられ、食べるために屠畜されます。
それに比べてジビエは、山で自由に生きていた野生動物で、人の生活を守るために“駆除せざるを得なかった命”です。
本来は焼却処分されてしまう個体も多いなかで、ありがたくいただくという行為そのものが、駆除に関わる人たちの取り組みを支えることにもつながります。
まずは一度、“おいしいジビエ”に出会ってください。
山の幸うり坊屋の一皿は、ジビエのイメージを変えるきっかけになると思います。
飛騨に来る機会がありましたら、山の恵みとともに、お店でお待ちしています。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 地元のジビエ料理店さんと一緒に、猪ベーコンとアスパラを合わせた「アスパラベーコン」を作ったんですが、すごくおいしい一皿になりました。 […]